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 マリモと地球温暖化 〜第二章 マリモの二酸化炭素吸収能力を検証する〜

 では私達が栽培しているマリモと地球温暖化の関係を解き明かしていきましょう。ご存知のように地球温暖化の主た る原因は二酸化炭素濃度の増加です。現在進行している温暖化抑制のために森林に大きな期待が持たれている事は皆さんご存知でしょう。これは樹木が空気中の 二酸化炭素を取り込んで、光合成を行い、幹の中に炭素を取り込んで成長するからです。つまり木材は炭素の塊と考えられ、こいつを燃やすと再び二酸化炭素に なって空気中に飛んでいってしまうので、木材を燃やしたりするのはなるべくやめましょう、といわれているわけです。親愛なるマリモも光合成を行い二酸化炭素を吸収し、体のなかに炭素を溜め込みます。基本的に植物は藻であれ樹木であれ体は炭素の化合物で構成され、炭素を体に溜め込みます。
 

ではマリモの光合成量から検証していきましょう。 少し化学の知識や計算が出てきます。 嫌いな人はすっ飛ばして結論だけ読んで下さい。

マリモの光合成量

 まず上表をご覧ください。前章で取り上げたマリモの光合成曲線です。 私達が育てているマリモも阿寒湖のマリモと同じ光合成能力を示すとします。 普通育てているマリモに一番近いマリモは19mmの個体でしょう。(もっと大きいの持ってる!! って人は自分で計算してみてくださいね。なるべく計算の過程を示しておきます。)

 19mmの個体でも茶色の線の個体と青い線の個体で、光合成能力に差があります。
これはマリモの生息している環境の違いのようです。マリモは暗いところだと 小さな光合成能力を持ち、明るいところだと大きな光合成能力を示すというふうに 明るさによって光合成能力を変化させることができる生物です。ですから19mmの個体でも、明るいところに住んでいた個体は大きな光合成力を持ち暗いところに住んでいたマリモは 小さな光合成能力を持つということになります。

ここでは光合成が活発な方の個体の光合成能力で検証します。 皆さんは自分のかわいいマリモには十分な光を与えていることと思いますので。

ではマリモ一粒の総光合成量を求めましょう。
 
まずマリモの体積を求めなくてはいけません。
体積は前章の個体の大きさを参考にして4/3πabcの式で求まります。 計算すると3251mm3です。これに1mm3あたりの最大光合成量をかけると このマリモ全体の1時間あたりの酸素発生量は74.7μl(=0.0000747リットル)となります。
ちなみに上の表の値は標準状態(0℃、1気圧)での値に補正されています。 これを気体の状態方程式に放り込んで計算すると酸素の物質量が出ます。 計算してみると3.36×10-6mol(0.00000336mol)でした。酸素はこれだけ固定されました。 この酸素を放出するために二酸化炭素を4.59×10-6mol固定したことになります。

 二酸化炭素吸収能力を検証する
 
 さてこの二酸化炭素吸収量はどのくらいの量なのでしょうか?
身近な車のエンジンを燃やすときに用いるガソリン(レギュラー)の二酸化炭素排出量と 比べてみましょう。 あなたが車を運転してガソリンを1リットル消費したとします。 ガソリンは密度が0.7559g/cm3で分子式はC8H14.6(=分子量110.6)と表せます。 つまりガソリン1リットル中に炭素は(1000×0.7559/110.6)×8=54.7molの炭素が含まれます。炭素1molから二酸化炭素が1molできますから二酸化炭素はガソリン1リットルから54.7molの二酸化炭素ができます。

もしマリモがぶっ続けで光合成を行いガソリン1リットル分の炭素 を吸収したとするとどのくらいの時間がかかるでしょう? 計算すると54.7/(4.59×10-6)時間かかります。 これは11917211.3時間です。 これは496550日で年に直すと1360年ほどです。

 とんでもない数字ですね。今から1360年前は何年かというと西暦641年です。 この頃日本で何が起こっていたかというと遣唐使の始まり(630年)と大化の改新(645年)です。時代は飛鳥時代です。

 ちなみにマリモがガソリン1リットルの炭素から糖を合成したとすると1630gのグルコースができます。

 マリモがガソリン1リットル分の二酸化炭素を吸収しつづけて1360年。実際には夜もありますからもっ と時間がかかるでしょう。ここでの計算はマリモの成長を無視し、マリモが同じ大きさで光合成を続けた値として計算してありますから実際のマリモの 光合成量とはかなりずれが生じるでしょう。マリモだって増殖しますしね。 1360年の間19mm玉一粒しかいないというわけにはいきませんから。 この計算の結果は参考程度に記憶しておいて下さい。

 いずれにせよマリモに地球温暖化の抑制のため二酸化炭素を吸収させるということはかなり無謀なことのようです。
 
皆さん地球環境を大切に。
 
 

参考文献:平成2年度阿寒湖のマリモ調査事業報告書
:新版 溶剤 ポケットブック 有機合成化学協会編
:エンジンの辞典 朝倉書店

 

 


 
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