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昔の阿寒観光
 

 阿寒湖のマリモが大量に激減した終戦〜昭和50年代、日本の高度成長とともに減少したマリモ達がいます。マリモの減少にはたくさんの原因が考えら れています。木材搬出による湖水の汚濁、水力発電のための水位の低下によるマリモの打ち上げ枯死、観光客の増加による水質汚濁、観光遊覧船の乗り入れによ る生息地かく乱等々です。この中で木材搬出と水力発電によるマリモへの悪影響は想像できますが、あとの観光客の増加による影響はあまりはっきりとしたイ メージがわきません。「観光は野生生物には害しかないだろうな」ということは他の生物の例などでなんとなく想像できますが決定的なものではありません。そ こで客観的にマリモの減少時期に阿寒湖ではどのような観光が行われたか知りたいと思っておりました。いろいろ情報を集めているうちにこの問題についての資 料もそろったことですし皆さんにちゃんとお知らせできると思いこのコーナーを作りました。では過去の阿寒湖の観光について記していきます。
 

 時は昭和30年代半ばから、昭和40年代にかけての話です。このころ日本は東京オリンピック・東海道新幹線開業(昭和39年)を象徴に戦 争から復興し高度経済成長の始まったころでした。下表を見てもわかるように阿寒湖の観光客数も年成長率10〜15%の伸びとまさに「高度経済成長」を象徴 しているといえます。
 
阿寒の観光客 阿寒の出来事 阿寒以外での出来事
昭和35年 312000人   池田内閣が所得倍増計画を提唱
昭和36年 365000人 チュウルイ島にマリモ観覧施設を作る。観光船の生息地乗り入れを自主規制 「上をむいて歩こう」が大ヒット
昭和37年 399000人 チュウルイ湾にマリモ打ち上げ防止堤を設置 キューバ危機
昭和38年 458000人 北海道教育委員会と阿寒町が調査 「鉄腕アトム」「鉄人28号」大ヒット

 このころの阿寒湖はすでに国立公園に指定され開発が規制されていました。マリモも昭和27年に特別天然記念物に指定され厳重に保護される のが当然の扱いになっていました。阿寒湖畔は現在大きな観光地となっていますが、すでに昭和30年代には湖畔では旅館等が林立する一大観光地になっていた ようです。
 上の表にも掲げましたように観光客数はうなぎ上りで地元業者はこの増加する観光客に対するため地区に対する規制を緩め施設の拡充を望んでいました。

 
観光客の阿寒湖への意識
 
 当時の観光客に対してアンケートを行った記録があります。興味深いので紹介しましょう。

*質問1 来る前の阿寒国立公園に対するイメージ
湖と原生林に囲まれた公園 40%
神秘的な公園 23%
原始的な風景を誇る公園 16%
湖、火山、温泉に恵まれた公園 14%
動植物の特異性 5%
その他 2%

 現在の阿寒国立公園は「森と湖と火山」が大きなキャッチフレーズとなっていますが、昭和30年代も自然に対する期待が大きかったようで す。マリモが出てきていませんがこの質問は阿寒湖ではなく阿寒国立公園のイメージを質問したものなので気をつけてください。阿寒国立公園は阿寒湖だけでは なく屈斜路湖、摩周湖も含む広大な地域なので…。


*質問2 印象のよかった観光地と悪かった観光地
印象のよかった観光地 阿寒湖15%85%その他の観光地
印象の悪かった観光地 阿寒湖35%65%その他の観光地

 いろいろな観光地を回った人から聞いたものだと思いますが少々質問の形がはっきりしないのは私も感じます。ただ阿寒湖に対して満足する人よりも不満を感じた人のほうが多かったようです。


*質問3 阿寒湖畔の印象
物と自然は調和しているかという質問に対して 調和してない69%31%調和している
観光施設に関してどう感じるか 雑然としている65%35%現状のままでよい
ボート・観光船に関して 景観を破壊37%63%現状のままでよい
騒音に関して 騒がしい35%65%うるさくない

 これはそれぞれの項目に対して二択式でアンケートを行なったようです。観光施設、建築物に対してはマイナス評価が多くをしめています。阿 寒国立公園を訪れる観光客は湖と原生林といったものを期待してくるのに(質問1より)阿寒湖畔についてみたら大きな鉄筋旅館があり派手な観光客向けの商店 などがあって大きく失望したようです。



*質問4 阿寒湖畔に対するイメージ
マリモ 40%
原始林に囲まれた静かな湖畔 21%
俗化した観光地 20%
アイヌ民族 11%
歓楽的温泉郷 6%
保養地 2%

 マリモが全体の40%も占める健闘ぶりですね。阿寒湖=マリモという意識をもたれた方が多いようです。「原始林に囲まれた静かな湖畔」という評価と「俗化した観光地」と相反する評価がほぼ同数を占めるの面白いです。



*質問5 阿寒湖の将来に望むこと
原始林の保存 80%
厚生福利的観光地 15%
近代的観光地 4%
都会的観光地 1%

 全体の八割を占め圧倒的大多数の人が原生林の保存をしめました。阿寒湖が開発されることは観光客も望まなかったのでしょう。現在は温泉街 のある湖畔の森林は開発されまくっていますが他の湖畔は保護されているといっていいでしょう。観光池にありがちな「湖畔一週道路」なんかも作ってないです し。


観光客のマリモへの意識

質問4より阿寒湖のもっとも大きなイメージはマリモでした。そのマリモに対して当時の観光客がどの程度の認識を持っていたかもアンケートしていました。非常に興味深いです

*質問1 マリモが天然記念物に指定されていることをご存知ですか?
はい98.5%1.5%いいえ

 マリモが特別天然記念物に指定されていることはさすがに当時でも知れ渡っていたようです。特別天然記念物に指定されてそんなに日がたっていないときですし。
 

*質問2 マリモの生息地を見物したいですか?
はい89.8%10.2%いいえ
 
 マリモの生息地を見たい人が大多数でした。見たいのが人情でしょうねぇ。
 

*質問3 質問2ではいと答えた人に対して、その場合マリモ保護に支障があるとしてもマリモ生息地を見物したいですか?
はい36.0%64.0%

 この質問はアンケートの肝ですね。4割もの観光客がマリモのためにならなくてもマリモ生息地を見たいと思っていました。今では環境や自然 に対する意識が高くなってモラルがよくなってある生物の保護のためにならなくても自分が見たいから生息地に入ろうとすることを自制できる人が増えていると 思いたいです。
 

 過去の観光客を見てきましたが現在の観光客とあまりニーズは変わらないかもしれません。交通手段や豊かさは変わりましたがニーズは変わっ ていないと思いました。アンケートからは過去から阿寒に原生の自然を望む声が大きかったことがわかりましたが、現在の阿寒のパンフレットを見ると森と湖と 火山といった原生の自然が阿寒の売り文句となっているからです。
 変わったのは受け入れる阿寒側なのかもしれません。現在は昭和30年代よりますます俗化したと思います。湖畔にローソンできていますし。確かに便利です が阿寒へのニーズが大きな温泉旅館ではなく原生の自然ならばこういった施設の整備は必要ないのかもしれません。そうはいってもきれいにしないと他の観光地 との競争で負けてしまうかもしれないと、言われそうですが阿寒の魅力が原生の自然である限り他の温泉しかないような観光地と同じ戦略で戦う必要はないと思 います。観光客が引き付けられる阿寒の魅力は原生的な自然なわけですから。阿寒も持っている自然を生かした観光形態を作ればよいと思います。

 さてマリモに関してはアンケート最後のマリモ保護に支障があるとしてもマリモ生息地を見物したいという人が4割近くもいてびっくりしま した。現在でもこんなにいるとは思えませんがやはり観光客個々のマリモに対する意識は低かったのかもしれません。現在ではもうちょっとマリモの生存につい て真剣に考えてくれる人が増えていればいいなぁとおもいます。
 
 
 

観光資源の保護 同志社大学観光事業研究会 1966
北海道新聞、毎日新聞、朝日新聞